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I AM AT . . .

mixed media, 2015

 

 

   アタミアートウィーク2015(AAW)で出品した作品。AAWは熱海市内の空き家を利用した展覧会で、この年で3年目となった。私は、園芸家である自身の母親が、2006年から熱海市で観光事業(フラワーツーリズム)に携わっていたことかた着想した本作に加え、大正時代に建てられた別荘建築でもう1点作品を発表している。

 

   海がほど近い渚町会場で発表したこの作品では2人の母親が題材になっている。1人はわたしの母親。もう1人はこの店舗の大家である芥川氏の母親(故人)である。渚町会場は3軒のスナックが列なっていて、いまはどの店も使われていない。わたしは会場入り口と入って2番目のスナックで作品を発表した。入り口には開店祝いで用いられる花輪と観客にある行動を促すインストラクションが置かれている。インストラクションには「どうぞ花を持ち帰ってください。ただし、4つの条件を満たす場合に限ります。」

と書いてあり、その条件はスナックの中に入ると知ることができる(下記に記載)。スナック店内にはインストラクションの4つの条件のほかに、2人の母親にまつわるテキスト、写真、グラス、ボトル、コースターが置いてある。

 

   花輪の花を持ち帰るという行為は、私が住んでいる東京では考えられないものだが、花が早くなくなったほうが繁盛するという験担ぎから、持ち帰ることが許されている地域もある。

 

   なお、インストラクションの4つの条件は以下の通り。

1. あなたが熱海在住であること。

2. 自分の家まで持って帰ること。

3. 窓際や玄関口など、外から見える場所に飾ること。

4. 棚にあるグラスやボトルを花瓶として使用すること。

 

   上記の条件の通り、花を持ち帰ることができるのは熱海在住者だけであり、また持ち帰った花は街を彩るために使わなければならない。これは熱海市でフラワーツーリズムに携わっている私の母親が望んでいる「花で溢れた熱海」のための芝居じみた実践でもあり、閉店したスナックの繁盛という不可能な験担ぎでもある。花輪の花は展覧会が始まって数日で全て持ち帰られ、展示会場の入り口には無惨な姿の花輪スタンドだけが残された。私は街に広がったであろう花々を探しに熱海市内を歩いたが、3カ所でしか花を見つけることができなかった。

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